零細企業でWebサービスを作る際に「みんなのアイデアを出し合って」みたいなことをやって感じたこと。
みんなでアイデアを出し合う。
多数決で決める。
公平で平等、ちょっと楽しい感じがする、サークルみたいな連帯感。
スタートアップ企業や小さなWeb制作会社でWebサービスを作って運用を始めようとした時、みんなでアイデア出し合ってみたいな雰囲気によくなります。
しかし、実際にWebサービスやツールなどを小さな会社で企画・開発するうえで、多数決やみんなの意見やアイデアを集める・尊重するということをやると、僕の経験上高確率で失敗します。
失敗というか、なかなか形にならず、その話はなかったことになる。
せっかくみんなの時間を使ったのに、保留みたいな感じで放置されることになるアイデアが多いです。
もちろんそんなことない、少ないメンバーでも全員が優れているからアイデアもまとまるし、Webサービスの運営できちんと収益を上げている、という会社もあると思います。
会社にもよるとは思うのですが、「みんなのアイデアを出し合って」をやって良い結果になった試しが僕にはないのです。それは誰が悪いとかではなく、なんとなく話し合って何となく「やる?」みたいな話になって、ちょっと手を付けて受託制作の仕事が入ったんで保留になる、みたいな流れ。
最終的に形になったとしても、えらく時間がかかります。
では、どうしてそうなるのか?
その理由について考えてみました。
- 責任のない意見やアイデアは誰かが責任持って形にしないと形にならない。
- みんなで持ち合ったアイデアを多数決で決めるほど無意味なものはない。
- アイデアをカタチにするのは社内研修のようなもの。
- 何をつくるかより誰とつくるかという意味を理解できた。
責任のない意見やアイデアは誰かが責任持って形にしないと形にならない。
正確に言うと責任なき中での意見やアイデアは大したアイデアではないのです。
よく小さな会社で、
「社長がワンマンでみんなの意見は聞かない」
「アイデアを出させといて自分の独断で事を進めてしまう」
と批判しているのを見かけます。
僕も正直そう思ってました。
しかし、自分が実際に企画開発して運営する立場になってみると、「これ良いんじゃない?」「これが今流行ってるから乗っかってみては?」みたいな、「やってみたら?どう?」みたいなアイデアな出し方って本気度が薄いんです。
アイデアがおうかがいレベルでしかないんです。
それは、しょうがないといえばしょうがなくて、自分たちに決定権はないのと、自主的ではなく、会社からアイデア出せと言われたから、お伺いを立てる感じになってしまうのです。
打ち合わせ自体も、取りあえずみんなで話し合っていけば形になるんじゃないか?みたいな何となく、誰も責任は取らないけど、思ったことは発言するみたいな雰囲気になってしまいます。
当事者意識や責任がない人が集まって、アイデアや意見を話し合っても、誰も収束する方向に話を持って行かないので、結局話がまとまらないのです。
何気ない雑談の中にヒントがあることも事実ですが、それを誰かが責任持って形にする方向に持っていかないといけません。
さあ!どうぞ、みなさんでアイデア出し合って決めてください!
みたいな経営者の方もいますが、そんなこと小さな会社でやってもまとまらないのです。それはただの無責任。
僕は自分で経営に携わってみて、それがよく分かりました。
みんなで持ち合ったアイデアを多数決で決めるほど無意味なものはない。
制作のうえでネーミングなどを多数決で決めることがあります。
多数決って公平を期す為にやっているようなものなので、選挙などでは有効であっても、ものづくりにおいては意味をなさない行為だと感じます。
これは会社にも依りますが僕はそう思ってます。
やはりネーミングにおいても、立案者の思いとか将来象を託すという意味で、立案者が候補を出すべきではないかと思います。
僕も一時期は会社で、みんなでネーミング案を持ち寄って、多数決でネーミングなどを決めるということをやっていた時期もありました。
しかし、多数決にしてしまった以上、よくも悪くも決定せざるを得なくなるのです。
今になって思うと、多数決を選択したのは、「公平でありたい」「みんなで決めたこと」「みんなで作るんだ」「決め方を決めるのが面倒」といった理由であって、多数決という方法事態に有効性を感じてのことではありませんでした。
どちらかというと雰囲気を読んで面倒臭がった結果です。
多数決を取るにしても、責任のある人や立案者がアイデアを出し、第三者のアンケートとして多数決を用いるのは良いと思います。
基本的なことは、最後まで責任を持つ人間がきちんと決める。
小さな会社であればやはり社長になるのでしょうか。ワンマンといわれようが、零細企業では社長または経営側の責任ある人間がまとめるべきです。
みんなのアイデアを集めるにしても、これが大切だと思います。
アイデアをカタチにするのは社内研修のようなもの。
個人で開発するのとは異なり、会社でWebサービスを立ち上げようとした場合、責任を持って取り組める人って少ないと思います。制作者はそれぞれに自分の作業領域を持っていますので、何も自分から挙手をして仕事や責任を増やそうという、もの好きはそんなにいません。
スタートアップで採用をしていると、小さな零細企業であっても、自分でWebサービスを作りたい、という人が何人も来ます。
そういう人のアイデアは、こんな感じのもの、富裕層をターゲットにしたサービス、とか漠然とやりたいということがあっても具体的ではないことが多いです。
そして決まって収益はスポンサー広告。
そこでこの収益モデルではダメだ、具体性がない!と言ってしまうとそれまでで、今後は会社でWebサービスを運営していきたい、アイデアを社員からも集めたいのであれば、形にしてみることも必要だと思います。
アイデアをカタチにするのは練習のようなものです。
そこに企業としての成果とか、収益性とかそういったものを求めても、はっきり言って意味ないです。特にスタートップやこれからWebサービスを立ち上げていきたいと思っている会社は実績もないので、誰も正解なんて分かりません。
形にしていく中で、ひとりひとりの責任感や達成感が蓄積していきますので、ダメ元でも形にする期間は必要だと思います。ただ、ずっとそれやってるとサークルみたいになって会社が潰れちゃうので注意が必要ですが。
何をつくるかより誰とつくるかという意味を理解できた。
何をつくるかより誰とつくるか。
という言葉がありますが、まさにモノづくりの現場ではそれに尽きます。
誰と一緒に作るかによってアイデアの出方も作るスピードも変わってきます。
人海戦術で、人ばかり集めて「さあ!みんなでアイデア出し合って作ろう!」とやっても、ろくなもん出来ないし下手したら何も作れません。
やはりそこは何を作るかより誰と作るかなのだと思います。
何をつくるにせよ、作り上げられる責任感のあるメンバーが集まらないと前に進みません。
みんなで作るのであれば、そこは集まるメンバーの質=人が一番重要だと思います。
優秀なメンバーが集まらない、そこは経営者の人となりなのでしょう。
これは経営者が精進しないといけないのだと思います。
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小さな制作会社を渡り歩いて、たいていの会社はキーマンのような人がいるか社長が良い意味でワンマンでないと自社でサービスやツールを作り出すのは難しいと感じました。
どこの会社でもみんなで決めるというサークルのようなノリをしようとするのですが、このエントリーで書いたように、零細企業でそれをやると、あまりうまくいかないように思います。
経営者の中にはアイデアすら社員に全面的に求める人もいますが、それが出来る人材は、人をアテにしているような経営者のもとには来ないと思います。
みんなで決めること自体が良くないこととは思いませんが、それを出来るようになるには、まずは経営者などの責任のある立場の人間が、きちんとサービスで成功した実績を作らないといけないと思います。