クレームにすぐに謝罪することは危険!状況をよく把握して言い方を考えて対処しよう。
制作の仕事をしていると、納品物のミスや不具合でクライアントからクレームが入り、謝らないといけない場面が多々あります。
中途半端に言い訳をしたりすると、クライアントの怒りを余計に刺激するので、まずは非を認め謝る。ミスした分の信用を取り戻せるように、今まで以上に気を付ける。僕はこれを徹底してきたつもりです。
しかし、よく事実関係を確認せずに、相手が怒っているからという理由で、簡単に謝ってしまうととんでもないことになることがあります。
特に対応が悪い、とかそういった抽象的なクレームの類です。
制作をしていると対応の良し悪しというのは、時には品質以上に大切です。
しかし、人によっては間違ったことを言ってなくても言い回しがきつかったり、事務的で感情がない対応を悪気なくしてしまうことがあります。
人間は感情の生き物ですので、相手を気に入らない、と一度思ってしまうとどこまでも気にいらなくなります。気に入らない人のやったことはすべて納得できなくなることもあります。
言い方が気に入らない。態度が気に入らない。そういった感情が、クレームに繋がるようなこともあります。
そういうクレームは担当している本人(気に入らない人)には決して入りません。あえて直属の上司や上の立場の人間に直接入ってきます。そんなクレームが入った時、上司が取りあえず謝るといった姿勢だと後になって大変なことになることもあります。
例えばこんな話。
スポンサーリンク
~~~~~~
とある制作会社に、納期がかなり厳しくどこの制作会社でも断られたらしい案件を持ってきたベンチャー企業がありました。
納期に間に合わせようとすると、開発の期間のみでテストの期間はまるで取れないような危険な案件。しかし、仕事が欲しい一新で制作会社はこの案件を受注しました。
ただ、制作者からもスケジュールのタイトさなどから、不具合などの危険性を担保出来ないという点については強く声が上がっていました。
ですので、受注の段階でスケジュールがかなりきついのでテスト期間が十分に取れない、バグなどが大量に出る可能性があるので、そのバグはリリースしてから速やかに改修していくことで対応する、という話を念を押してクライアントには確認しました。
クライアントも引き受けてくれるのであれば、動作確認など出来ることは何でも協力するとのこと。
制作が進むと予想の通り、急ぐあまり確認がおろそかになり、完成と言いつつ動かしてみると満足に動かない、張りぼてのシステムが出来上がっていました。
そんな中においても、出来たところから仕様変更をどんどん入れてくるクライアント。
すでに現場はアップアップで対応できません。ディレクターは極力クライアントの要望を撥ねて、とにかく完成を目指しました。
ある日プロデューサーに直接連絡が入りました。
「御社の対応はどうなってるんですか?こちらは建設的な提案が欲しいだけなのに、Aさんに聞くとできません、の一点張り。御社は提案型の会社ではなかったんですか?
しかも、不具合も酷い。うちのスタッフまで一緒にチェックしているんですよ。」
別に提案型の会社だと言った覚えもなく、動作検証にも協力してくれる、ということだったのに、と思ったのですが、取りあえず先方の怒りを鎮めようと、
「申し訳ありません。弊社のスタッフの対応が悪く不快な思いをさせてしまったようで。。」
と謝りました。
しかし、後でよく確認してみると、スタッフは決して理に叶っていないことを言っているのではなく、出来なければ出来ないなりの代替案も提案していた。こちらの落ち度はありませんでした。
ただ、メールのみでの淡々とした言い方がそっけなく感じられ、相手の心象を悪くしてしまっていただけでした。
プロデューサーが謝り、クライアントの言い分を吐き出させたところで、一旦は矛を収めた形になったクライアントでしたが、後日またクレームの連絡が入りました。
やはり対応面が悪いこと、制作過程の不具合が多かったので自社のスタッフの確認工数がかかってしまった、ということで損害請求を差し引いた形で請求を起こすか、損害金を請求させてほしい、との連絡がきました。
期間が短く、動作検証についても協力しながらやっていくという話だったので、制作会社としては損害賠償なんて応じられるわけがありません。
しかしその旨を電話で連絡すると、
「いやいやいや、この間すいませんって御社の非を認めていましたよね?御社側の対応にも問題があったって認められてますよね?非を認められているのであれば、きちんと誠意を見せていただかないとこちらも納得して支払いができませんよ!」
と一歩も引きません。
成果物にも対応にも満足していないので満額請求には応じられないというのです。
その後も話は平行線のまま、クライアントは「対応の瑕疵を認めた」ということを掲げて一歩も引かず、最終的には弁護士を通してのやり取りにまで発展しました。
~~~~~~
スポンサーリンク
この話は極端な例えかもしれませんが、実際に起こり得る話です。
一度謝罪した内容を撤回するのは非常に困難です。
それを撤回しようとすると「じゃあ、なぜ事実関係をきちんとしないであなたは謝ったんですか?」ということになります。
謝った時点ですでに交渉の余地が少なくなってきます。
相手も狂ったように非を認めたことにしか焦点を定めてきません。
中には執拗にYESかNOかだけを聞いてくる人がいます。
「悪いのは御社ではないのですか?はい、いいえどっち?」
事情の一部でも認めてしまうとそこに付け込んできます。
「この点については弊社の対応が悪かったと思います」なんて言おうものなら、
「ほら!ほらほらほらあ!そうですよね!そこからすべて始まってるんですよね!」なんてたちまちこちらが悪いことに持っていかれそうになります。
明らかに自社の非であれば、速やかに謝ることは最重要だと思います。
しかし、制作の過程で出てくるクレームの中には、必ずしもこちらが悪くない場合と言う場合も少なからずあります。
日本人はすぐに「すいません」「申し訳ない」を口癖のように言ってしまいがちです。
それを聞いて怒っている相手が多少満足することも確かです。
しかし、その「すいません」「申し訳ない」のひとことに付け込んでくる人もいるということを知っておいて損はないかと思います。
謝ることもひとつの駆け引き、制作だけの話ではありませんが、クレームについては相手の怒りに動揺せず、一旦状況をきちんと把握してから判断したいものですね。